西赤石山は、石槌山脈から北東部に続く支脈である法皇山脈の中の1座です。ざっくり言うと四国山地の一部ですね。東赤石山と共に四国百名山にも数えられる人気峰で標高は1,626mです。1691年の開坑から1973年(昭和48年)の閉山まで283年間続いた日本三大銅山の一つ、別子銅山の一部でもありました。形成する橄欖岩に含まれる鉄分が酸化して、岩が赤茶けているのが「赤石」の由来です。今回は登山が大好きな友人に、愛媛で初心者でも気軽に登れる良い山はないか尋ねたところ、この西赤石山を勧められた次第です。
旧別子銅山日浦登山口
愛媛の山は南側から登るのが良い、ということで車を運転してやってきたのは、別子ダム近くの日浦登山口。10台くらいの駐車場に、トイレもありました。この日は秋の気配が強まるという天気予報の通り、朝7時で16℃と少し肌寒いくらい。にも関わらず、登山口に着いた時には車がたくさん止まっていました。自転車も置いてあったのは、恐らく別の登山口から登る人たちでしょう。
最初の登りは沢沿いのルートで、銅山の名残りもあってか、山道がかなり広く整っていました。しばらく進むと、綺麗に積まれた石垣と赤レンガの壁が!苔むした雰囲気がとても良いですね。所々に看板があり、銅山の昔の写真を見ることができます。歴史に思いを馳せて観光気分も高まってまいりました。余談ですが、この看板に名前が書かれているように、別子銅山はあの住友グループ発祥の地なんです。私も初めて知りました。
次々と変わる風景は道中の魅力
さらに奥へ進むと、道幅も狭くなり、石がゴロゴロしている荒れた道になってきました。それでもはっきりとした道があるので、迷う心配はなさそうです。道中には何箇所か休憩できる広場のような場所もありました。
コの字に積まれた石垣に囲まれたお地蔵様がある場所で休憩している人に出会いました。ここは銅山越と呼ばれる場所のようです。軽く挨拶を交わし、そのまま進むと縦走路に突入しました。ふと振り返ると、随分登ってきたのが分かります。お天気にも恵まれて、左を向けば瀬戸内海、右を向けば四国山地の絶景。ここからはひたすら稜線を上ったり下ったりしながら進みました。
この西赤石山周辺は、超アルカリ性の岩質もあって植生も少し変わっているようです。ツガザクラやアケボノツツジなど高山植物の宝庫らしいのですが、秋に訪れたためか、花はあまり咲いていませんでした。また写真では伝わりにくいのですが、道に散らばる小石から岩肌まで、日差しを受けてキラキラと光るんです。結晶片岩というらしく、幻想的な光景が楽しめます。
山頂到着!
前方のあの峰が山頂かな?と思うこと2~3度。最後にロープを使って岩場を登り、ようやく山頂へ到着です。別にタイムアタックしてたわけではないんですが、やや速いペースで小休憩を含めて約2時間半。いつの間にか汗だくで上着は腰に巻き付けていました。
山頂はシンプルに最高到達点の杭と、看板だけでしたが、その代わり視界が開けていて、いかにも「山頂」という雰囲気で最高の景色でした。他の登山者たちは山頂でくつろいでおり、カップラーメンを食べている人もいました。私はコンビニで買ったおにぎりとアンチョビチーズでお昼に。いつか自分でも山頂でコンロ調理をしたいと思いつつ、絶景を眺めながら青空の下で食べるチーズは最高に美味しかったです!
ちなみに、山頂から東に続く稜線があり、先に進むと八巻山、東赤石山へと至るそうです。そちらは本気の岩場なので、初心者お断りだとか。ちらっと見えた岩肌の峰が前赤石山でしょうか?いつか向こうに行けるといいなぁ。
お昼休憩が終わり、日差しも強くなってきたので、下山です。一度通った道なので、岩場以外はさくさく進みます。ただ石が多いので登りより気を使いますね。できれば靴はしっかりした登山靴で、靴下も厚めが良いと思います。
帰りの分岐で、別のルートを選んで下山しようと、笹ヶ峰方面へ。少し回り道ですが、緩やかな傾斜で歩きやすかったです。しかし突然登山アプリから警告アラートが。どうやらルートを外れてしまったようです。少し戻ってアプリに従って細道の方へ入ります。
この時、気付いていれば。。。
波乱の下山、野山を駆ける
細道を進むと鉄塔がありましたが、なんとそこで道が途切れていました。アプリで方向を確認しつつ周りを見ると、わずかに踏み均された道が。。。
道?・・・というより崖っぷちです。
疑問には思いましたが、ルート自体は他の方の山行記録を元にしているので下りれないことはないはずです。意を決して急斜面を下りていきます。しかしいくら下っても元のような整った道に出ることはなく。。。
道は細り、沢にかけられた橋も手作り感たっぷり。増水時に引っかかったであろう小枝とかもそのままでした。その頃には察していたんですが、ちょっと玄人向けの登りルートだったんですよね。大失敗。山行計画は慎重に、ですね。
無事の下山と至福の一杯
一部道なき道を進みつつ、何とか元の道まで帰ってきました。行きにも通過した冷たい湧き水(ダイヤモンド水)で喉を潤して、ひと休み。このダイヤモンド水ですが、ボーリング探査中に機械が水脈にあたり、ダイヤモンドを散りばめたロッドの先がねじ切れて、今もそのまま残っているそうです。ダイヤモンドの味はわかりませんでしたが、疲れた身体には格別に沁みました。
最終的に下山までにかかった時間は休憩含めて5時間27分。登山口までの移動も含めると1日がかりですね。今後友人の「初心者でも気軽に登れる」は信用しないことにします、はい。
それでも、歴史的な遺跡も見られて、これだけ魅力的な山は滅多に無いですね。季節や目標、ルート設定によっても様々な熟練度の人が楽しめそうです。